②【緩和ケアに関する考察その①】
始めに言うと私は広告のプロを25年やってきた。プロはテレビを見る視聴者には媚びず、視聴者がもう一度見たくなるCMを徹底的に追求し、依頼する広告主にも厳しい意見を言い、金を貰いながら見た事もない映像で感動させ、会社や商品をブランドとして定着させる。
だからテレビは見ないし、テレビの情報には耳を貸さない。何故なら、それは結果。企画されたコンセプト、それを組み立てた経緯があるからオンエアという結果がある。オンエアは完了形、そこに至る時間が有効であり、他人が作ったものを見ている暇はない。プロとしてのプライドは誰よりも高く、プロは教える立場として、誰にでも理解できるコミュニケーションを編み出さなくてはならない。
たとえば昨年当たったCMのアマゾン。
赤ん坊が犬を見て泣き、父がライオンのぬいぐるみを見て、犬にタテガミを買うCM。プロの私の審査なら100点満点で50点。(詳細は後記)
▲赤ん坊(-50点)▲動物(-50点)そして▲CMソング(-50点)。禁じ手(人が共感しやすい手法を用いる事)を3つも使う手法。たとえ素人受けしようが、広告の品質の審査では点数はない。品質とは視聴者に媚びる手段を用いて制作しない事。世界最高峰のCMフェスティバル【カンヌライオンズ】ならこのCMを見た瞬間にブーイングの嵐だ。
テレビタレントを使う事、下手な踊りで気をひく事、自社製品を「美味い」と言って飲む事など、店頭でのPR(プロモーション)と混同したCMは評価対象外にしかならない。
視聴者が感じる事、視聴者がユーザーになる事、それをマジョリティとしてマーケティングする事(数値化)は全くの別物で、ネットの評価も全く信頼されるものではない。その評価を書いた人の信頼性が低いからだ。制作するプロはあらゆる数値の信頼度の高いものを中心に思考し、企業に利益をもたらす必要があるって事を誰でも知っている。視聴者に媚びる奴らとは比較されたくはない。
医師と看護師は人の病気を体験学習したプロであり、信頼性が高い人に患者は自分の病気を委ねる。その信頼性とは、ただ優しい事ではなく、医療の現場で決して諦めず病気と闘う強い意思を持つ人だ。但し例外がひとつ。それが【緩和ケア】。現代医療の最先端でも限界にある患者に1日でも長く生きてもらおうと、患者の病気の進行を見守りながらオーダーメイドに対応する厳しい環境に挑む人たち。
私はそこに着目し、過ごしたたった4週間あまりをレポートにした。先進医療やら科学的に細胞のひとつに着目するミクロ医学に対して、緩和ケアはマクロな世界。患者の感情や五感を優先する。もちろん血液の状態やスキャンデータなどの科学的情報は進行を示す手がかりではあるが、ケアを中心とする苦痛緩和は【人の尊厳が重要】。生きている事に精一杯な人が、救いを求めるものは何かを優先する。またその家族に寄り添う。
マスターカードのCMにキャンプしている家族がいる。電気もなくランタンのみ。でも楽しそうなキャンプファイヤー。キャッチフレーズは【お金で買えない価値がある】PRICELESS.
エモーショナル(感情的)な緩和ケアがまさにこれだと思う。
